経営者が知っておくべき賢い経費の使い方
2020.12.14
- その他
そのリース取引賢い経費の使い方?
一般に、会社の経費を見直すときは、毎月一定額が社外流出する固定費のうち、人件費が見直されがちです。しかし、従業員は「人財」と例えられるように、売上を産み出す資産でもあります。そのため、人件費の見直しは、ときに売上を減少させる行為に直結し、結果、人件費を見直す前の売上高人件費比率と変わらない経営状態になるといった負の連鎖に陥る可能性を含んでおります。人件費の見直しが必要な場合もありますが、設立数年の企業においては人件費よりも見直すべき経費が別にあることが多いものです。そこで注目していただきたいのが、固定費のうち設備に関連する費用です。
公益社団法人リース事業協会が発表しているリース需要動向調査報告書(2015年10月)によれば、調査対象の会社(合計1万社)の9割以上がリースを利用しているとされ、設備に係る費用についてリース取引が広く一般的に知れわたっていることが示されています。
しかし、身近であるがゆえに、設備を導入する際に他の選択肢を検討せずにリース取引を選択されている方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は設備投資する際にリース取引を選択することが最良の選択肢なのか、リース取引以外の賢い経費の使い方という視点から紹介してまいります。
リースとは?
前項を踏まえ、9割以上が利用しているというリース取引は本当に賢い選択なのでしょうか。
リース取引とは、設備を利用者が選択し、その設備をリース会社が利用者に代わって購入し、利用者に貸し出しする「賃貸契約」のことをいい、原則、契約期間中の中途解約は不可となります。設備の所有権はリース会社にあり、契約期間中は本体の価格に加え、金利、保険料などを含めた代金をリース料金として支払います。所有権はリース会社にあるため、契約終了後は設備をリース会社に返却しなければならず、引き続き利用したい場合は再リース手続きを行う必要があります。
リース取引のメリットとデメリットをまとめると以下のようになります。
▼メリット
・最新商品への入れ替えが容易
・初期費用が安い
・設備ごとのコスト管理がしやすい
▼デメリット
・トータルで見ると割高になることが多い
・中途解約ができない
・所有権はリース会社のため、利用に制限がある
公益社団法人リース事業協会による「再リース等実態調査(2019年度)」によるとリース期間が終了したものについて、再契約が結ばれるものは全体の7割にも達します。このような状況は導入した設備が長期的に使用できる点とリース取引が簡易的な点の両方を表しております。リース期間が長期的になると、知らずの内に意外と手数料を支払い続けていることに気づかされます。
そのため、予め設備をどれくらいの期間利用するかを導入時から検討しておくことによって、リース取引より割賦取引の方がトータルで支払う金額が少なく済むことが多々あります。そこで割賦取引について以下に説明します。
割賦とは?
割賦取引とは、必要な設備の代金を信販会社に立て替えてもらい、その代金と手数料を分割して信販会社に支払っていく取引をいいます。一般的に設備の所有権は、設備代金と手数料を支払うまでは信販会社に留保され、支払いが終了した時点で利用者のものとなります。また、リース取引同様契約期間中の中途解約は原則禁止されており、金額は本体価格や金利などを含めた合計金額になります。
割賦取引のメリットとデメリットをまとめると、以下のようになります。
▼メリット
・市場性のある商品の場合(自動車等)、下取り制度がある
・売却して現金化が可能
・資産となるため決算書の見栄えが良い
▼デメリット
・メンテナンスは利用者の自己責任になる
・不要になり売却できなかった際、廃棄に手間がかかる
・頭金が必要な場合がある
公益社団法人リース事業協会のリース需要動向調査報告書(2015年10月)によると、「購入理由またはリースを利用しなかった(あるいはリースをやめた)理由」として、
・「借入購入とリースを比較検討した結果」が22.6%、
・「再リースは手間で繰り返すと購入よりも割高になるため」が19.7%
と低い結果となっています。この結果から、8割弱の人がリース取引とそれ以外の方法の具体的な比較検討を行っていないことがわかります。加えて、再リースによって割高になってしまうということを比較出来ている人も2割程度しかおらず、こちらについても8割弱の人が多くのリース料金を支払ってしまっているという現状となっております。
次項では各種設備について、「リース取引」を選択した場合と、「割賦取引」の選択をした場合とで総支払額がどのようになっているかを表にしてみました。
リースと割賦のシミュレーション
※介護ベッドは主に在宅介護などで使用されることが多く、(福祉用具産業市場動向調査報告【2016年版】一般社団法人日本福祉用具・生活支援協会より)介護保険も適用されレンタルや購入がお得なため、リースや割賦はほとんど利用されておりません。
リースに向いているもの・人
公益社団法人リース事業協会のリース需要動向調査報告書(2015年10月)によると、リース取引について感じるメリットとして、「設備導入時に多額の資金が不要である」が 71.7%と最も高く、以下、「事務管理の省力化が図れる」(48.5%)、「コストを容易に把握できる」(43.8%)、「設備の使用予定期間にあわせてリース期間を設定できる」(22.8%)と続いています。この結果から、設備投資時の資金準備が難しい事業者様がよくリース取引を利用していることがわかります。
リース取引は、リース会社が負担する税金等が含まれた一定料金を支払っていくため、支払った金額をリース料として経費に計上すれば良く、会計ソフトを導入していない事業者様や、支払額を固定させて事業計画を考えられている事業者様に向いています。
また、設備が複合機の場合、定期的なメンテナンス保守料金がかかり、売却もしづらいため、リース取引に向いています。
割賦に向いているもの・人
次に割賦取引について考えてみましょう。割賦取引で一番大きなメリットはトータルでの支払額が少なく済むことです。総額を見てみると、リース取引は金利や保険料、事務管理コストなどを含めた料金がかかるため割高になることが多いですが、割賦取引はそれに比べると割安になることが多いです。割賦取引は支払期間が終われば、リース取引のように再度の契約金などが発生することはないため、長く同じ設備を使っていくには最適な方法といえます。特にリース取引については、会計上の法定耐用年数を元にリース期間が定められていることが多いので、法定耐用年数を超えて設備を使用する予定がある場合には割賦取引を検討すべきでしょう。支払期間が終われば自己資産になるため、売却し手元資金にと考えている人にも向いています。
また「4.リースと割賦のシミュレーション」からもわかる通り、車やパソコンは比較的割安なリース取引がありますが、売却金額によっては割賦取引がお得になります。高額な歯科ユニットに関しては、年数などに限らず割賦取引がお得であることがわかります。しかし、割賦取引を選択した方が総支払額が安く済む車やパソコンが実は企業の中で最も多くリース取引によって導入されている設備でもあります。
上記は公益社団法人リース事業協会の統計「リース需要動向調査報告書(2015年10月)リース利用設備と購入設備」より、現在使用している設備の内リース取引で導入している設備の割合を表したグラフです。企業にある情報通信機器(事務機)含む)の85.4%、輸送用機器(車など)は67.1%がリース商品であることがわかります。企業に導入している車やパソコンの半数以上はリース取引にて導入されているのが現状です。
以上の結果から、リース取引を選択するか、割賦取引を選択するかの賢い選択は、
①「どのような設備を」
②「どの程度の期間使用するのか」
によって決まることがわかります。
リースと割賦選択の目安
まとめ
リース取引と割賦取引には様々な特性があることがわかりました。一般的にリース取引を利用している方が多いですが、取引期間満了後に売却できることを考慮すると実は割賦取引の方が総支払額は少なくなり、優れていると思われるケースもあるのではないでしょうか。確かにリース取引は新しい設備を導入しやすいなどメリットは多くありますし、よくホームページ上で「簡単・手軽・お得」という単語を前面に出しています。ただそのメリットや、単に販売業者に勧められたということだけで、よく検討せずに選んでいた人も多いと思います。その結果、自分にとって最良の選択は他にあるのではないかと思う方も出てくることが考えられます。全てのリース取引が割高というわけではありません。情報社会の世の中でこのコラムを読んだ方が、自分に合った取引形態を選択し、ただ何となくではなく、どのくらい経費が削減できるのか、どんな使い方をしていくのか、取引期間満了後の先までしっかり検討していただけると幸いです。リース取引と割賦取引、どちらにもメリット・デメリットがありますが、短期的なメリットで選択をすることなく、長期的な経営戦略を練った上で、最良の選択をすることが「賢い経費の使い方」ではないでしょうか。
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