保証人とは?
2022.10.13
- 用語解説
はじめに
皆さんは「保証人」という言葉を聞いてどんなことをイメージしますか。「保証人」という言葉自体は聞いたことがあっても、その意味を正しく理解できている人は少ないのではないでしょうか。本コラムでは、保証人の中でも「単純保証」と「連帯保証」の違いから実社会での保証人の利用状況等を説明していきます。
保証人とは
保証人とは、債務者が債務の履行を怠ったときに、債務者に代わりその債務を履行する義務を負う人のことをいいます。
例えば、マンションやアパートの賃借人が大家に家賃を支払わないなどの債務の不履行をしたときに、賃借人に代わってその債務の履行をする人のことをいいます。
単純保証人と連帯保証人の違い
保証人とは、民法上の原則である単純保証と例外規定の連帯保証に大きく分けることが出来ますが、単純保証は実務上ではほぼ活用されておらず、一般的に連帯保証が活用されております。
これについては、債権者側の要望が反映されており、具体的には、単純保証人も連帯保証人も書面によらないと無効となるため、手続面で変わらないことが挙げられます。さらに、単純保証人には以下の利益が認められておりますが、連帯保証人にはそれがないことも連帯保証人が実社会において一般的である要因と考えられます。
単純保証人にあって、連帯保証人にはない権利と利益については次の通りです。
- 催告の抗弁権
単純保証人は主たる債務者が債務の返済を滞ったときに主たる債務者に代わり債務の弁済をする立場のため、債権者にまずは主たる債務者に請求をするように主張することができる権利をいいます。 |
- 検索の抗弁権
単純保証人は主たる債務者に取り立て容易な財産があることを立証した場合、債権者に対しまずはその財産から取り立てるように主張することができる権利をいいます。 |
- 分別の利益
単純保証人が複数いる場合、主たる債務の不履行額を単純保証人の数で割った金額のみを弁済することにより保証人としての義務がなくなる利益をいいます。 |
上記の様に連帯保証人には各種権利・利益が認められていないことから債務不履行があったときに連帯保証人の方が単純保証人より都合がいいという債権者側の意向が強く働くことが連帯保証人が実社会の上で一般的である要因と考えられます。
このため、以下では保証人表記について単純保証人ではなく連帯保証人として説明させていただきます。
テレビドラマ等では誰かの借金の保証人になったため、身を滅ぼしたなどのエピソードが多く一般的に保証人というとネガティブなイメージが定着しておりますが、実社会において保証制度は広く活用されております。
広く使われている保証人には以下が挙げられます。
1.信用保証:お金を借りる際に求められる保証人
2.身元保証:会社入社の際などに求められる保証人
3.賃借人の債務の保証人:マンションやアパートを借りる際に求められる保証人
【単純保証人と連帯保証人の違い】
保証人の区分 | 単純保証人 | 連帯保証人 | |
民法上の位置づけ | 原則 | 例外 | |
実務上の位置づけ | 例外 | 一般 | |
実務上の使われ方 | ほぼなし | 身元保証 | |
信用保証 | |||
賃借人の債務保証 | |||
契約の種類 | 要式契約 (書面または電磁的記録でしなければ 効力をもたない) |
要式契約 (書面または電磁的記録でしなければ 効力をもたない) |
|
附従性 | 主たる債務が消えればなくなる | 主たる債務が消えればなくなる | |
随伴性 | 主たる債務が譲渡されればそれに伴って 譲渡される |
主たる債務が譲渡されればそれに伴って 譲渡される |
|
補充性 | 催告の抗弁 | あり | なし |
検索の抗弁 | あり | なし | |
分別の利益 | あり | なし |
保証人の保護
保証制度は実社会において広く浸透しておりますが、保証制度の中でも信用保証の分野において特にトラブルが多かったことから、保証には一定の制約が課せられるようになりました。
これは事業者金融の分野において銀行から融資を受けづらい中小企業、個人事業主に対し家族以外の連帯保証人を過度に要求し融資を行ったものの主債務者である中小企業、個人事業主がその債務の履行を怠ったため連帯保証人から融資金の回収をしてきたことが原因と言われております。
そこで、信用保証の分野においては、連帯保証人が保証する金額の上限(極度額)を設けるとともに、その保証期間を最大で5年間と定め、保証期間の更新の意思表示がなければ、保証期限日をもって元本が確定することと定めました。
しかし保証におけるトラブルは信用保証の分野に止まらず、身元保証や賃借人の債務の保証の分野においても波及していきました。そこで、2020年4月に民法が改正され、保証契約においては保証する金額の上限(極度額)を定めなければいけないことになりました。
さらに、事業資金の借入れの保証を第三者に依頼する場合、公証役場にて保証意思宣明公正証書を作成しなければならないことになりました。
これらにより、保証人は主たる債務者がその債務の履行をしなかったときに被る責任の上限が明白となり、保証人になったことにより生活が破綻するような事態に一石を投じたものとなりました。
まとめ
近年では、信用保証の分野において、保証人保護の要請からなるべく保証人を徴求しないように金融庁が各金融機関に呼び掛けておりますが、上述のような保証に係るトラブルの背景を見ると致し方ないものと思われます。しかし信用保証の分野における保証人は、金融庁の呼びかけにより多少の減少はあるものの、まだまだ保証に頼っている金融機関が多いのが現状です。
親族や友人知人から保証を依頼された場合、それが単純保証なのか連帯保証なのか、そして保証の原因となる債務が信用保証なのか、身分保証なのか、それとも賃借人の債務の保証なのかを理解した上で、内容を吟味し、納得してから保証人になることが後のトラブルを避けるためにも重要となってきます。
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