歯科医院の開業に必要な資金と調達方法
2022.12.19
- 医療機関
- 資金調達
はじめに
令和2年現在、歯科医師資格を有する者は107,443名おり、うち歯科診療所経営者(個人法人含む)は58,867名と全体の54.8%の歯科医師が独立開業しています。
厚生労働省『医師・歯科医師・薬剤師統計の概況』より
このことから歯科医師資格を有している方は高い確率で独立開業しているのが現状となっております。
一昔前は歯科大卒業後2~3年の20代後半から30代前半で独立開業する方も珍しくありませんでしたが、自費診療を初め高度化する診療技術の習得のため、現在は30代後半から40代くらいでの新規開業が多くなっております。
本コラムでは、歯科診療所の独立開業を考えている方に向けて、①スケルトン開業、②居抜き開業、③M&A開業のうち①スケルトン開業の資金調達の方法等を説明していきます。
※スケルトン物件とは、内装等何もない躯体だけの状態を指し、それを利用した開業をスケルトン開業と便宜上呼んでいます。
メリット・デメリット
スケルトン開業の場合、自身の決めた場所で心地よい環境下で理想とする歯科診療所を開業でき、主に以下のようなメリット・デメリットが挙げられます。
【メリット】
◎全てを決めることができるので自由度が高い
昨今は、診療所の外観や内装にこだわることも集客を構成する一要素となっています。流行を取り入
れながら理想とするレイアウトを自身で決めていくのは、楽しみの一つと言えます。また、何よりも
自身の理想とする歯科診療を何の制約も受けず、開業できることが最大のメリットといえます。
【デメリット】
×費用と時間がかかる
理想とする歯科診療所の開業に際し、資金繰りは切っても切り離せない問題です。更にテナント工事
も含め時間がかかってしまうことがデメリットとなります。
以上のことから、歯科診療所をスケルトン開業する際には費用計画と時間計画を綿密に立てながら計画的に進めていく必要があります。
資金計画
まずは資金計画を立てましょう。
資金計画は、下図のように左の大分類から右にいくにつれて細分化していき、その費用を導き出す予算表を作成する事から始めます。作成には時間を要しますので、まずは自身の思い描く理想の診療所を開業するためにはどれほどの資金が必要なのか大まかに作成し、追加削除を繰り返し完成させていきます。
大分類 | 中分類 | 小分類 | 価格 |
内装 | 治療スペース
受付スペース |
診療ブースの設置 クロス・タイル カウンター設置 ・・・設置 |
・・・・・円 ・・・・・円 ・・・・・円 ・・・・・円 |
医療機器 | 診療機器
・・・機器 |
ユニット スケーラー レーザー セレック ・・・・・・ |
・・・・・円 ・・・・・円 ・・・・・円 ・・・・・円 ・・・・・円 |
・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・・・円 |
合計 ・・・・・円 |
上記のような予算表を作成したところで下記の資金計画表に転記します。
このように、資金計画表を作成することで歯科医院開業に必要な金額を算出することができます。
事業計画
次に歯科診療所を開業した後の事業を円滑に経営してくための事業計画を作成します。
事業計画は歯科診療所開業後、具体的にどの程度の収入が見込めるのか、収入を得るために費用がどれほどかかるのか、利益はどの程度見込めるのかをシミュレーションしながら作成していきます。
事業計画も予算表同様に細分化すればするほどより良い事業計画が作成でき、資金調達の実現性が高くなります。
まず、以下の表で人件費や家賃などの固定費からどの程度の売上高が必要なのかシミュレーションしていきます。ここで肝心なことは、売上から経費を算出するのではなく、経費から逆算して売上目標を立てていくことが重要となります。
表から導き出した金額をもとに事業計画表を作成していきます。
固 |
家賃 | ・・・円 | |
共益費 | ・・・円 | ||
人件費 | ・・・円 | ||
水道光熱費 | ・・・円 | ||
生活費(自身) | ・・・円 | ||
借入返済額 | ・・・円 | ||
その他雑費 | ・・・円 | ||
固定費合計額 | ・・・円 |
※資料作成参考例
事業計画を作成し売上目標を立てたあとには、実際にその売上目標を達成できるような診療所の開業予定地を探す必要があります。また、ライバルとなりうる近隣歯科診療所に一日あたり何人ほどの患者が来ているのか調べるなど、他診療所のことも意識する必要があります。
【診療圏調査】
1.予定地を中心に来院患者が見込める診療圏を設定
2.人口データを元に圏内の人口を推計
3.疾患別の受療率から圏内の総患者数を算出
4.競合クリニックと自院の競争バランスから来院見込み患者数を推測
その際、近隣歯科診療所と比べて強みとなるコンセプトを持ち、自身の診療所を差別化していくことも重要となります。
スケジュール
続いて、時間計画について説明していきます。
上記、資金計画、事業計画の作成と同時にスケジュール管理も重要となってきます。
このスケジュール管理に不備があると、思わぬ出費が嵩んだりします。
具体的には下図のような工程表を作成し、内装・外装会社や医療機器販売会社や広告会社などの業者と打ち合わせしながら綿密に作り上げていきます。スケジュール管理は思うようにいかないことが往々にしてありますので余裕をもって作り上げていくと良いでしょう。
資金調達
資金計画・事業計画を作成し、スケジュールを立てることができたら、実際に資金調達に向けて動き出しましょう。
一般的に、新規開業資金としての資金調達であれば日本政策金融公庫や元々お付き合いのある銀行等に申し込む場合が多いと思います。各金融機関によって融資可能な金額、審査書類、融資の条件等が異なってきますが、申込から融資内諾までにかかる時間として、おおよそ2~3か月程度は見積もりましょう。いずれも資金計画書や事業計画書の提出が求められ、金融機関の担当者にその根拠等を求められるため、綿密に資金計画と事業計画を作成したことが役立ちます。
資金調達は余裕を持って行うことが重要ですが、資金不足により診療所開業というゴールを遅らさざるを得ないといった理由や、診療所開業後の運転資金を開業資金に使ってしまい、運転事業資金が心もとないといった状況になった場合、ノンバンクを利用するという方法もあります。資金調達に際し、銀行等の金融機関に事業説明をするのに苦労する方が多くみられますが、医療専門のノンバンクである当社であればその煩わしさはなく最短3日程で資金調達が可能となります。
今回は歯科医院の開業に必要な資金と調達方法についてご紹介いたしました。皆様の歯科開業に、このコラムをぜひお役立てください。
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