実質金利と表面金利の違い
2023.1.17
- 用語解説
はじめに
金融機関から資金調達を考える際に、どうしても融資利率ばかりに目が行ってしまい、低い利率を提示している金融機関を選んでしまう傾向があるかと思います。
金融機関によっては、年率【最低利率】%~【最高利率】%と融資利率に幅を持たせており、表記されている利率にだけ着目していると意外な落とし穴が潜んでいる可能性があります。一般的に表記されている利率のことを「表面利率」といいますが、金融機関によっては、表面利率を低利表記しながら手数料等の名目で金利以外の金銭を徴求する場合があります。この場合、実際に負担する利息及び費用を合算した額を年利表記した「実質年率」を把握しないと思わぬ費用負担を課せられることになりかねません。本コラムでは、表面利率と実質年率の違いを明確にし、資金調達の一助となる情報をお伝えいたします。
利息制限法について
表面利率と実質年率の違いを説明する前に、「利息制限法」についてご説明します。利息制限法とは、金銭の貸借における上限金利を定めた法律であり、具体的には以下のように設定されておりますが、これを超える実質年率は無効となります。
借入額 | 上限金利(年率) |
10万円未満 | 20% |
10万円以上100万円未満 | 18% |
100万円以上 | 15% |
利息の計算方法は、以下の計算式により算出されます。
利息=元金×表面利率×経過日数÷365(閏年の場合、366)
表面利率以外の費用負担がない場合、表面利率=実質年率となりますが、調査手数料や事務手数料などの利息以外の負担がある場合(これらを「みなし利息」といいます)、表面利率+みなし利息=実質年率となることを理解することが重要となります。表面利率のみに着目すると金融機関によっては、表面利率を低く設定しておいて、みなし利息を徴求することにより、結果、利息制限法の上限金利を負担することにもなりかねません。次の章ではこの表面利率と実質年率の違いについて具体例を交えて説明いたします。
表面金利と実質金利の違い
例えばA社とB社で資金調達を検討しているとします。
A社は表面利率が年率3.80%、B社は表面利率が年率5.50%のため、表面利率のみで比較するとA社の方が支払う利息が少なく見えてしまいます。しかし、A社で契約をすると事務手数料や調査料等の追加の費用が発生するため、表面利率はA社の方が低いものの、実質年率ではA社の方が高くなってしまいます。つまり、B社と契約した方が負担は少なく済むことになります。さらに、B社であれば36回の返済回数を待たずして繰上弁済したとしても追加の費用はかかりませんが、A社の場合は中途解約賠償金として完済時元金の3%を負担しなければならず、実質年率はさらに高くなってしまいます。
融資条件表 | A社 | B社 |
契約日 | 2022年12月1日 | |
契約額 | 500万円 | |
返済回数 | 36回 | |
約定日(初回返済日) | 毎月20日(2022年12月20日) | |
表面金利 | 年率3.80% | 年率5.50% |
融資手数料 | 借入額の3.00%(15万円) | なし |
調査料 | 3万円 | なし |
中途解約賠償金 | 完済時元金の3.00% | なし |
融資実行時受取額 | 482万 | 500万 |
実質金利 | A社 | B社 |
36回で完済した場合 | 6.59% | 5.50% |
24回で完済した場合 | 7.83% |
このように、表面利率だけに着目して金融機関を選んでしまうと、結果的により多くの費用を負担してしまうことになってしまいます。A社で手元に500万円の融資を受けたければ約520万円の契約をしなければなりません。
みなし利息に含まれるもの・含まれないもの
利息制限法では、金融機関が受け取る元金以外の金銭は、どのような名義であったとしても利息とみなされます。これを「みなし利息」といいます。例えば、融資手数料や調査料、解約賠償金等がその対象となり、表面利率とみなし利息の合算額である実質年率が利息制限法で定めた金利以下であれば有効となります。
参考条文
利息制限法第3条(みなし利息)…金銭を目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他いかなる名義をもってするかを問わず、利息とみなす。ただし、契約の締結及び債務の弁済の費用は、この限りでない。ただし、以下に関してはみなし利息から除外されます。
【みなし利息に含まれないもの】
・契約の締結および債務の弁済費用
⇒公租公課の支払に充てられるべきもの(契約印紙代など)や強制執行の費用、担保権の実行としての競売の手続きの費用その他公の機関が行う手続に関してその機関に支払うべきものや債務者が金銭の受領又は弁済のために利用する現金自動支払機その他の機械の利用料(政令で定める額の範囲内のものに限る)など。
・債務者の要請により債権者が行う事務の費用
⇒カードの再発行手数料や書面の再発行に要する費用、再度の口座振替手続きに要する費用など。
このように、みなし利息に含まれないもの、つまり契約の締結費用や債務の弁済費用以外の金銭の支払いはすべて利息に含まれるため、利息以外の費用を徴求する金融機関と取引をする場合、実質年率はどれくらいなのかを把握する必要があります。
まとめ
費用や手数料という名目で様々なみなし利息を請求する金融機関は少なからず存在します。金融機関から融資を受ける際は、提示された表面利率のみに着目するのではなく、表示されている「融資条件表」をよくご覧になり、実質年率を意識することが重要です。本コラムを通じて表面利率にばかり目を向けて金融機関を選定してはいけないことを理解していただければ幸いです。金融機関を選ぶ際は、その金融機関の業歴や手数料の有無、電話応対の仕方など様々な視点で選定することが良いでしょう。
当社では、一部商品を除き、基本的に手数料その他一切の費用をいただかないクリーンな商品をご用意しております。つまり、表面利率=実質年率となるため利息負担額の計算が非常に容易になります。資金調達の際に本コラムを参考にしていただければ幸いです。
最新記事